共同創業者契約はなぜ必要?スタートアップが知るべき基本と落とし穴
共同創業者契約の重要性:スタートアップの未来を守るために
スタートアップを立ち上げる際、志を同じくする仲間と協力して事業を進めることは非常に重要です。特に複数のメンバーで創業する場合、「共同創業者」という関係性が生まれます。この共同創業者間の関係性を明確にし、将来的なトラブルを未然に防ぐために不可欠なのが「共同創業者契約」です。
口約束だけで事業を進めてしまうと、後に認識のずれが生じ、事業の継続に深刻な影響を与える可能性があります。本記事では、スタートアップの共同創業者契約がなぜ重要なのか、そしてどのような内容を盛り込むべきか、さらに注意すべき落とし穴について具体的に解説していきます。
共同創業者契約とは何か、そしてなぜ必要なのでしょうか?
共同創業者契約とは、複数の共同創業者が会社の設立や事業運営にあたり、それぞれの役割、責任、権利、義務、そして将来的な会社の株式に関する取り決めなどを明確にするための書面による合意です。
この契約がなぜ必要かというと、主に以下の理由が挙げられます。
- トラブルの未然防止: 事業が成長するにつれて、共同創業者間での役割分担、意思決定、利益配分、将来の株式のあり方などについて意見の相違が生じることがあります。事前に契約で明確にしておくことで、これらの認識のずれや対立を防ぐことができます。
- 公平性の確保: 各共同創業者の貢献度や出資に応じた株式の比率、権限などを明確にすることで、公平性を保ち、不満が生じるのを防ぎます。
- 事業の安定: 共同創業者の誰かが途中で離脱するような事態が発生した場合でも、残りのメンバーや事業に与える影響を最小限に抑えるためのルールを定めておくことができます。これにより、事業の継続性を守ります。
- 外部からの信頼獲得: 投資家など外部のステークホルダーは、創業チームが明確な取り決めを持っているかを重視します。共同創業者契約は、チームのガバナンスがしっかりしていることの証となり、信頼獲得にも繋がります。
契約に盛り込むべき主な項目
共同創業者契約に含めるべき内容は多岐にわたりますが、スタートアップが特に留意すべき基本的な項目をいくつかご紹介します。
1. 役割分担と責任範囲
各共同創業者がどのような役割を担い、どのような業務に責任を持つのかを明確にします。例えば、「CEOとして経営全般を担当する」「CTOとして技術開発を担当する」といった具体的な記述が必要です。
2. 持分比率と希薄化に関する取り決め
創業時における各共同創業者の株式持分割合を明確にします。また、将来の資金調達などにより株式が「希薄化(発行済株式数が増えることで、1株あたりの価値が相対的に減少すること)」する可能性についても、基本的な考え方を確認しておくと良いでしょう。
3. 意思決定のルール
どのような事項について、誰が、どのような方法で意思決定を行うのかを定めます。重要な意思決定(例:大規模な資金調達、事業内容の変更、役員報酬の決定など)については、全員一致が必要なのか、過半数で良いのかといった取り決めが重要です。
4. 貢献度の評価と報酬
創業期のスタートアップでは、給与が低い、あるいは無給であることも珍しくありません。各共同創業者の貢献度をどのように評価し、将来的にどのような報酬を得る可能性があるのかについて、基本的な合意をしておくことも大切です。
5. 知的財産権の帰属
創業者が開発した技術、サービス、コンテンツなどの知的財産権が会社に帰属する旨を明確にします。特に、創業メンバーが事業立ち上げ前に個人的に開発していたものがある場合、それが会社の事業に利用される際の取り決めも検討が必要です。
6. 退職時の取り決め
共同創業者が何らかの理由で会社を離れる場合のルールを定めます。例えば、残された株式の扱い(会社が買い取るのか、他の共同創業者が買い取るのか、価格はいくらか)、競業避止義務(退職後、一定期間は同種の事業を行わない義務)や秘密保持義務(会社の機密情報を漏洩しない義務)などです。これらの条項は、会社の将来を守る上で非常に重要です。
7. 紛争解決条項
万が一、共同創業者間で意見の対立や紛争が生じた場合に、どのように解決を図るのかについて定めます。例えば、まずは協議による解決を試み、解決できない場合は第三者による調停や仲裁、あるいは訴訟といった段階を設けることが考えられます。
見落としがちな落とし穴と注意点
共同創業者契約を締結する上で、特に注意すべきいくつかのポイントがあります。
口約束のリスク
「仲間だから大丈夫」「まだ会社が小さいから」といった理由で、口約束だけで済ませてしまうのは非常に危険です。口約束は後に「言った」「言わない」の水掛け論になりやすく、明確な証拠がないため、トラブル発生時に解決が困難になります。必ず書面で残し、全員が合意した証として署名・捺印するようにしましょう。
安易なひな形利用
インターネット上には様々な契約書のひな形が出回っていますが、これをそのまま利用するのはお勧めできません。スタートアップの状況は千差万別であり、それぞれの事業内容や共同創業者の関係性に合わせてカスタマイズする必要があります。安易なひな形利用は、自社に合わない条項が含まれていたり、必要な条項が欠けていたりするリスクがあります。
専門家への相談のタイミング
共同創業者契約は、専門的な法律知識が必要となる場面が多くあります。法務に関する知識がない状態で、自分たちだけで完璧な契約書を作成するのは非常に困難です。可能であれば、創業初期の段階で弁護士などの専門家に相談し、アドバイスを受けながら作成することをお勧めします。早期に専門家と連携することで、後々の大きなリスクを回避できます。
まとめ:未来を見据えた関係構築のために
共同創業者契約は、単なる紙切れの文書ではなく、スタートアップの未来を共に創り上げる共同創業者間の信頼関係と、事業の安定的な成長を支える基盤となります。創業初期は事業のアイデアや開発に集中しがちですが、共同創業者間の関係性を法的に明確にすることは、その後の予期せぬトラブルを回避し、事業に集中できる環境を整える上で非常に重要です。
本記事で解説した基本的な項目と注意点を参考に、ぜひ信頼できる専門家とも相談しながら、貴社に最適な共同創業者契約を締結することを検討してみてください。